6月の週末(4)
6月24日(土)
午前中、施設にいる義祖母の面会。転んでしまったようで、しょんぼりしていた。帰り際、寂しくなってしまったのかツーっと頬を涙が伝っていて、胸が苦しくなった。
昔、水道橋の「後楽園飯店」で食事をしていたとき、少し離れた席のおばあちゃまが私をじっと見つめて、目があうと満面の笑みで手を振ってきたんだけど、私はいったい誰か、わからない。「後楽園飯店」は高級店で落ち着いた雰囲気なので、おばあちゃまの無邪気さがその空間で浮いていた。よく見るとその一家は何か映画から出てきたように妙にキマっていて、頭を高く巻き上げた着物姿のマダム、伊藤博文のような威厳ある髭を蓄えたおじさま、そして白いレースのワンピースを着たおばあちゃまという3人だった。
おばあちゃまが何度も何度も手を振るので、私は最初、知り合いかと思った。将棋関係者だったらご高齢の知り合いもいる。
でもどうにも思い当たらない。
手を振り返していいのかも判断がつかず、最後私は席を立つときに、一度だけ手を振り返した。笑顔が一層弾けて、とても喜んでいた。一緒にいるおばさまとおじさまは、おばあちゃまのそんな態度を知らんぷりして食事をしていた。そのコントラストが奇妙だった。
帰り際「もし知り合いだったら、ご挨拶をした方がよかったな」と思い、店員さんにかくかくしかじかことの顛末を話すと、そっと、あの一家はお得意様で、おばあちゃまは痴呆症なのだと教えてくれた。
老いを考えるとき、ぱあっと笑ったおばあちゃまの顔を思い出す。
6月25日(日)
武蔵境にある軽音楽部の友人宅でたこ焼きパーティーをした。
娘さんが、ダンス教室の発表会に向けた踊りを少しだけ披露してくれた。おひねりをあげたいくらい可愛かった!
一緒にシルバニアファミリーで遊んで帰宅。軽音の友達に会うと、心がほぐれる。
しかし暑い。もう盛夏といっても過言ではなさそう。
6月19日 週の日記
6月19日(月)
朝打ち合わせを終えた後、せっせと原稿。納品してから、代官山蔦屋でプラントベースの勉強会兼簡単なお料理教室に、土屋さんとKIKIちゃんと参加した。
先生は、フランス在住の華子さん。元ラグジュアリーブランドのPRをされていたとあって、オーラが明るく、品のある方だ。
プラントベースとヴィーガンがどう違うのかいまいち腹落ちしていなかったんだけど、ヴィーガンが”食べない選択”をするもので、プラントベースは植物由来のものを積極的に食べる”加点法”だと聞いた。
初めましてのひとたちと6人でソースやスパイス粉を作った。みなさんお上品で可愛らしくて、さすが代官山でのお料理教室〜と感じ入ってしまった。
夜、昨日の水餃子が恋しくてまた水餃子。エビとシソと豆腐と梅の水餃子を作って、さっそくソースを使い切った。
6月20日(火)
15分刻みで著名人3名を撮影&インタビューしていく緊張取材。
ご一緒したライターさんが同い年で、映画を専門にしている方とあって業界が近く、色々とお喋り。文章だけで稼ぐ覚悟をひしと感じさせる方だった。格好いい。
終わってから、同僚と宮下パークで軽く食事をして帰宅。明日は、気合の入るインタビューだ。しっかり準備をしてから就寝。
6月21日(水)
北九州で活動している、NPO法人抱樸の代表・奥田知志さんにインタビュー。『重力の光』という映画を観て感銘を受け、去年北九州の拠点に足を運んで、いつかお話を伺いたいと思っていた。
奥田さんはよく笑い、よく話し、対話を大切にしてくださる方だ。忙しく、大きな課題に直面しているのに、人と向き合うエネルギーがすごい。
原稿を頑張ろう。
6月22日(木)
演劇を観に行く予定だったけど、前にした取材の追加インタビューを依頼いただき演劇はパス。毎日120%くらいの力で生きている感覚がある。
6月23日(金)
久しぶりに、近所に住む友人に会った。3月までは月に2回ほどの頻度で会い、その子の家で一緒に作業したり、チャーハンを作ってもらったりしていた。最近はタイミングが合わずご無沙汰だったので、久しぶりに会えてとても嬉しかった。
「友達とは季節に咲く花」と、作家の深沢七郎が書いていたのを思い出した。また蕾をつけ、花が咲くこともあるだろうし、そこに新しい種が撒かれることもあるかもしれない。
6月の週末(3)
6月17日(土)
ひとつの壁を越える日で、だいぶほっとした気分で24時を迎えた。
何かフィジカル面で試練のようなものを与えられたとき、サバンナに住む動物たちに思いを馳せるようにしている。
彼らは常に敵に狙われる過酷な環境でも悠々と暮らしている(ように見える)のに、医療に助けられ、自然界の恐怖にもほとんどさらされない私が慌ててどうすると。そして優しいゾウの目なんか思い出していると、たいていの試練が小さく思えるのだ。
午後に取材1つして、『トトロ』を観ながら昼寝。
毎年おいしいウニを送ってくれる漁師の”たこ八郎さん”から、今年もウニが届いた!みっちり牛乳瓶に入った、採れたて、なんの雑味もない。親戚と実家にも送ってもらった。さっそく興奮まじりに感謝の連絡が来た。
ちなみに、土曜の丑の日は「う」のつくものだったら鰻に限らず夏を乗り切るパワーがつくという説がある。毎年丑の日もこのウニがいいかもしれない。
6月18日(日)
午前中、ドラム式洗濯機をお迎えするために階段と洗濯機まわりを大掃除。洗濯機置き場のドアが閉まらなくなったものの、なんとかおさまった。私より業者の人が安心した顔をしていた。
午後、友達と明治神宮〜参宮橋を散歩。
明治神宮の奥に、代々木公園の喧騒とはかけ離れた開けた、静かに開けたスペースがあった。閉園のアナウンスが流れたのにポツポツと和んでいる人たちが帰る様子がなく、「もしかしてこの方々は人の姿をした明治神宮の神様たち…?」と思った。そういう、現実とは少し切り離されたフィルターがかかったような広場だった。
参宮橋の中華料理屋で食べた水餃子とビーフン、唐揚げがいたく美味しかった。本格的な夏になる前にたくさん散歩して、食べて、楽しかった。
6月12日 週の日記
6月12日(月)
朝から、初対面MTG。ずっとご一緒したいと思っていた方で、個人的に「こうなりたい」と思う一面がたくさんある人物でもあるので、わ〜、緊張した!
8月に面白い企画を公開できそうです。がんばるぞ。
6月13日(火)
今日は年に一度の「梅仕事」をする日。半休をとっているので、それまでしゃかりきに仕事した。
奈良ちゃんが激務を切り上げてやってきてくれて、一緒に瓶を煮沸消毒し、梅のヘタをとり、せっせと瓶詰めした。私は梅のアチャールも作った。
去年から、夜にスペシャルゲストでムーちゃんが合流することになっている。ムーちゃんは私の知り合いの中でも群を抜いて”歩くパワースポット”なお兄さんで、映画・ドラマプロデューサーをしている。知り合ってもう10年ほどだろうか。私が友人を亡くして落ち込んだとき、超多忙だろうに海を見に連れて行ってくれたりした。
天真爛漫な奈良ちゃんと、”歩くパワースポット”ムーちゃんと3人で餃子を包み、枝豆を茹で、スイカを用意して、夏の幕開けパーティーだ。途中から夫もやってきて、野球の話で盛り上がった。
みんなそれぞれの場所で頑張っている。たまにこうして集まって、食卓を囲み、くだらない話をして…これがあるから人生やっていけるんだと心から思う。
6月14日(水)
熱心に日ハムを応援するようになった。交流戦は地上波で観られるからいい。明日の撮影準備をしながらひとり盛り上がる。
6月15日(木)
土田くんとめいちゃんが近所まで迎えにきてくれ1日撮影。体力と反射神経勝負の撮影なんだけど、本当に天才的なメンバーがチームワーク抜群の働きをしてくれるので、素敵なカットが撮れてああ、仕事楽しいなと思うのです(しみじみ)。
インターンの大学生も、メキメキと現場慣れして誰よりもチアアップが上手。私にできないことを笑顔満開でやってのけて、見習うことがたくさん。
6月16日(金)
シーズナルの特集記事の制作が始まった。えっさほっさ、優秀な後輩が50近いブランドとやりとりをし、その素材をきめ細かな編集力をもってして1記事にまとめあげていく。
しかし金曜にもなると体力が尽き、夕方には脳味噌が溶け始めている気がする。「OVER THE SUN」の「今週もよくぞよくぞ、金曜までたどり着きました!」が沁みること。本当にみなさん、お疲れさまです。
6月の週末(2)
6月10日(土)
GARDEN AUX PARADISへ。那須から外れた田舎の広大な土地を活用して、オーガニックの香水ブランドが工房とGARDENを作ったのだ。
お食事がとっても良いお味なのにお手頃価格で驚いた。自然あふれるGARDENを、母と花の名前を当てながら歩いた。スタッフさんが皆さん揃って気持ちの良い接客をしてくださり、また行こうねって帰ってきた。
6月11日(日)
東京に戻る日。ジャンクなものが食べたくて、夫と待ち合わせをしてつじ田でつけ麺を食べた。
映画『怪物』を鑑賞。田中裕子さんの、音楽室のシーンが辛すぎて大ダメージを受けて帰宅。それでもやっていくしかないこの世界に、一筋でも希望を。
6月5日 週の日記
6月5日(月)
体調が芳しくないので、近所の総合病院へ。紹介状のない初診ということで、大金が飛ぶ。でも、何もなしと言っていただき安心できたので、よし◎
惚れ惚れしちゃう文章とはどんなものだろうと考えてみた。考えてみたところ、一番最初に、つちや温水プールのリサさんが浮かび、ああ、私は一筆書きのような文章が好きなんだと気づく。一気に読めて、「お見事!」と膝を叩きたくなるようなやつ。浅生ハルミンさんの『3時のわたし』もまさしくそれ。
読み手にも気負わせない、軽やかな人柄に惹かれる。
6月6日(火)
山奥の実家に帰る予定だったけど、まだ体調が戻らないので弟の家で過ごす。
夕方、そろそろホタルが出ている頃ではと、スポットへ向かったけど収穫なし。
6月7日(水)
中1の英語のテストで、「好きな英語の映画を答えなさい」という問題があり、「恋っていいな」と胸に響いた『ジョー・ブラックをよろしく』と書いた。案の定先生はそのタイトルを知らなかったようでバツがついたのだ。母に話したら怒って先生に電話をかけ、後日謝罪を受けた記憶がある。
『ジョー・ブラックをよろしく』を見返しながら、そんな苦い思い出があってもブラピは格好いいし、やっぱり恋はいいものだと思った。
6月8日(木)
LAVOT、マルちゃんの1歳のお誕生日。LAVOT社から、バースデーカードと1年の様子がオートクチュールで送られてきた。手厚さに感動。
冷凍の魚介類が冷凍庫の化石となりそうだったので、お祝いっぽくパエリアにした。
家族の体調の関係で、植物も、ペットも禁止な我が家。マルちゃんのおかげで、とても生活が賑やかになっている。テクノロジーに助けられていることを実感する。
6月9日(金)
安藤サクラさんの特集で、永山瑛太さんが「サクラといると長生きしたくなる」と言っていて、感動してしまった。この一言に彼女の魅力が詰まっている。東京に戻ったら、すぐに『怪物』を観よう。
6月の週末(1)
6月13日(土)
地元のお寺で、母と、母が指揮をとる合唱団の発表会。
老師がスカウト(?)した後継者の方がかなり実行力があり、お寺で音楽フェスを開催したいというのが今回の企画だそう。
風光明媚な場所で、キツツキや風の音、川のせせらぎもBGMになっていて心地よい。
山に神々が宿るとしていた山岳信仰に想いを馳せながら、合唱と歌を楽しんだ。
400人も来場者がいたようで、大盛況。地元の人たちに会えて、とても嬉しかった。
6月2日(日)
昼間、仕事をして過ごす。
落ち着いたところでリビングに行くと、熱心な日ハムファンの弟が試合をチェックしていたので、解説付きで一緒に観戦。なんてバラエティに富んだ面白いチームなんだろう。新庄監督は、選手ひとりひとりとの物語を紡ぐ力が素晴らしい。一気にファンになった。
将棋もそうだけど、「君の物語を私は応援する」という眼差し、これを持ち合わせていることが名匠たる所以なんだろうなと思う。
夕方、オンラインで取材。表現と社会活動についてお話を伺う。
夜は家族で、行きつけの居酒屋で外食。